2022年の第27回トップフォーラムは、東京銀杏会・神奈川銀杏会・埼玉銀杏会・千葉銀杏会共催で3月19日(土)13時から「脱炭素社会が導く新しい豊かさの創造」をテーマに、学士会館210号室で開催いたします。

今回は、懇親会なしで開催いたします。参加ご希望の方は、東京銀杏会事務局までお申し込み下さい。

また、フォーラムの様子は録画し、後日希望者にご覧いただけるようにしたいと考えております。

なお、新型コロナの感染状況いかんでは、中止等の可能性もありますので、お含みおき下さい。

最新情報は東京銀杏会ホームページに記載いたしますのでご確認ください。

申 込: お申込みは3月11日(金)まで  E-メール: tokyoichokai@gmail.com

テーマ:「脱炭素社会が導く新しい豊かさの創造」

開催日時:2022年3月19日(土) 

トップフォーラム            13:00 ~ 13:05  開会挨拶

              13:05 ~ 14:25  コーディネーター・パネリストの講演

              14:25 〜 14:40  休憩

               14:40 〜 15:40  パネルディスカッション

              15:40 〜 16:25  質疑応答

                                 16:25 〜 16:30  閉会挨拶

開催場所:学士会館210号室

          〒101-8459 東京都千代田区神田錦町3-28   TEL:03-3292-5936

           地下鉄 都営三田線、新宿線、東京メトロ半蔵門線の神保町駅(A9出口)徒歩1分

         (3年前まで開催していた東大の小柴ホールではないのでご注意下さい)

会 費:会員の参加費は5,000円/人 会員外の方の参加費は、6,000円/人

東京大学関係者以外の方も、会場に余裕がある場合には、会員の同伴を条件としてご参加頂けますので東京銀杏会事務局にお問い合わせ下さい。

申 込: お申込みは3月11日(金)まで  E-メール: tokyoichokai@gmail.com

コーディネーター/パネリストの講演要旨とご紹介

《コーディネーター》

武内 和彦 氏:公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES) 理事長

講演要旨 

―脱炭素社会が導く豊かさの創造-

世界が脱炭素に大きく舵を切っている。2021年には、米国がパリ協定に復帰するとともに、グラスゴーで開催された気候変動枠組条約COP26では、これまで努力目標であった「1.5℃目標」を追求すべき目標と位置付けるとともに、各国が提出している2030年排出削減目標の再検討・強化を要請することが決められた。

大幅な排出削減を短期間で達成するには、先端技術を最大限活用すると同時に、社会システムやライフスタイルを含む社会の大変革が求められる。私が理事長を務めるIGESでは、フィンランドの研究機関とともに「1.5℃ライフスタイル」を提案し、居住、移動、食など、脱炭素型ライフスタイルの選択肢を示している。

コロナ禍からの復興は急務の課題であるが、それを脱炭素に向けた社会の再設計につなげるグリーン・リカバリーの取り組みも活発化している。農林水産業に再生可能エネルギー利用を加えた地産地消体制の構築や、情報ネットワークでつながる分散型の地域づくりや働き方改革などは、新しい豊かさを生み出すと期待される。 

経歴              

1974年東京大学理学部卒業、1976年同大学院農学系研究科修士課程修了。農学博士。東京大学アジア生物資源環境研究センター教授等を経て、1997年より2012年まで同大学院農学生命科学研究科教授、2008年より2016年まで国連大学副学長/上級副学長。2012年より2019年まで東京大学サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)機構長、教授/特任教授。2016 年より国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)客員教授。2017年より公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)理事長。2019年より東京大学未来ビジョン研究センター特任教授。中央環境審議会会長代理、Sustainability Science誌(Springer Nature)編集長等を兼務。

専門は、地域生態学、サステイナビリティ学。人と自然の望ましい関係の再構築を目指して、アジア・アフリカを主対象に研究社会活動を展開している。最近では、持続型社会の構築を目指す俯瞰的な科学としてのサステイナビリティ学の発展に向けた世界的な取り組みを推進している。

《パネリスト》

小宮山 宏 氏:三菱総合研究所理事長・第28代東京大学総長

講演要旨  

―脱炭素社会の実現-

          コロナのワクチンは、3〜4年かかるだろうという専門家たちの予想に反し、わずか10か月で市場に出た。この事実は、専門領域というのが普通考えるよりもはるかに狭いということを象徴している。人類が蓄積した知識は膨大で、個人がその全体像を把握するのは不可能に近い。逆に、最適な知識を最適に動員する、私はそれを知の構造化と呼んでいるが、それができれば、ほとんどすべてのことは実現できるだろう。

             脱炭素社会も例外ではない。世界の知のネットワークから最適な知識を集め、脱炭素のために構造化することが必要だ。しかし、言うは易く、行うは難し。現実には知の構造化はほとんど実行されていない。科学技術振興機構の低炭素社会戦略センターはその困難な作業を行い、2050年日本の脱炭素化は可能であると結論した。技術的にも経済的にも可能であり、今よりはるかに良い社会になる。議論すべきは、現状からそこへ移行する具体論なのである。

経歴

1944年生まれ。1967年東京大学工学部化学工学科卒業、1969年同大学院工学系研究科化学工学専攻修士課程修了、1972年同大学院工学系研究科化学工学専攻博士課程修了(工学博士)。専門は、化学システム工学、地球環境工学、知識の構造化。1988年東京大学工学部教授、1995年同大学院工学系研究科教授、2000年同大学院工学系研究科長・工学部長、2003年東京大学副学長、

2004年国立大学法人東京大学理事・副学長、大学院工学系研究科教授兼務、2005年国立大学法人東京大学第28代総長、2009年国立大学法人東京大学総長顧問(2015年3月31日まで)、2009年(株)三菱総合研究所理事長、2010年プラチナ構想ネットワーク会長、2021年NPO法人STSフォーラム理事長。著書:『速度論』(朝倉書店1990年)、『入門熱力学』(培風館1996年)、『地球持続の技術』(岩波新書1999年)、『知識の構造化』(オープンナレッジ 2004年)、『東大のこと教えます』(プレジデント社 2007年)、『「課題先進国」日本』(中央公論新社、2007年)、『知識の構造化・講演』(オープンナレッジ 2007年)、『Vision 2050:Roadmap for a Sustainable Earth』(Springer 2008年)、『低炭素社会』(幻冬舎 2010年)、『日本「再創造」』(東洋経済新報社 2011年)『Beyond the Limits to Growth』(Springer 2014年)、『“多様なナンバーワン”作り』(財界研究所2016年)、『新ビジョン2050』(日経BP社2016年)、『New Vision 2050』(Springer 2018年)ほか多数。受賞:2020年瑞宝大綬章、2017年Sheikh Mohammed Bin Rashid Al Maktoum Knowledge Award(ドバイ知識賞)、2016年第9回海洋立国推進功労者表彰、2016年財界賞特別賞、2014年平成26年度「情報通信月間」総務大臣表彰、2007年Ordine Della Stella Della Solidarieta’ Italiana、2004年平成15年度化学工学会学会賞。

高村 ゆかり 氏:東京大学未来ビジョン研究センター教授

講演要旨 

―カーボンニュートラルに向かう世界と日本:COP26、世界の潮流、日本の課題―

ここ1、2年の間に、温室効果ガス排出実質ゼロ(ネットゼロ/カーボンニュートラル)をめざす動きが世界で急速に強まっている。2021年10-11月に英国・グラスゴーで開催されたCOP26では、工業化前と比べて1.5℃までに世界の気温上昇を抑えるという目標をめざすことが諸国の間で確認された。気候システムの解明と将来予測に関する科学の進展と、その科学に裏打ちされた、社会の危機感とシステミックリスクとして気候変動問題をとらえる企業、とりわけ金融が、こうした動きを加速させている。電力分野における再生可能エネルギーへの転換、モビリティの電動化といった分野を超えた技術の革新が、今足元で起きている脱炭素社会に向けた急速でダイナミックな変化を後押ししている。こうした変化の中での、コロナ後の持続可能な社会の実現にむけた日本の社会変革(トランスフォーメーション)の課題を考える。

経歴

1989年京都大学法学部卒業。1992年 一橋大学大学院法学研究科修士課程修了。1993年〜1995年 パリ第2大学第三(大学院)課程及び国際高等問題研究所留学。1997年一橋大学大学院法学研究科博士課程単位修得退学。1998年静岡大学人文学部法学科助教授。2000年〜2001年 ロンドン大学客員研究員。2004年龍谷大学法学部助教授。2006年同教授。2011年名古屋大学大学院環境学研究科教授。2018年東京大学国際高等研究所サステイナビリティ学連携研究機構教授。2019年東京大学未来ビジョン研究センター教授(現職)。2020年日本学術会議副会長。2021年環境省中央環境審議会会長(女性初)。

中井 徳太郎 氏:環境省環境事務次官

講演要旨

―カーボンニュートラルと地域循環共生圏―

我々はコロナと気候危機という二つの危機に直面しており、大きな時代の転換点にいる。気候危機への対応は世界的にも大きな動きとなっており、日本でも、2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言している。これからは環境を守ることを大きく超えて、サステナブルな経済社会という新たな文明社会への転換が必要となる。環境省では「脱炭素社会への移行」、「循環経済への移行」、「分散型自然共生社会への移行」という3つの移行を通じた経済社会のリデザインを一層進め、各地域が美しい自然景観等の地域資源を最大限活用しながら自立・分散型の社会を形成しつつ、地域の特性に応じて資源を補完し支え合うことにより、地域の活力が最大限に発揮する「地域循環共生圏」を具現化していくこととしている。

経歴

1962年生まれ。1985年東京大学法学部卒業。1985年大蔵省(現・財務省)入省。主計局主査(農林水産係)などを経て、1999年から2002年まで富山県庁へ出向。生活環境部長などを務め、日本海学の確立・普及に携わる。2002年財務省広報室長。2004年東京大学医科学研究所教授。2008年財務省理財局計画官。2010年同主計局主計官(農林水産省担当)。東日本大震災後の2011年7月の異動で環境省に。総合環境政策局総務課長、大臣官房会計課長、大臣官房秘書課長、大臣官房審議官(総合環境政策局担当)、大臣官房審議官(総括担当)、廃棄物・リサイクル対策部長、総合環境政策統括官を経て、2020年7月より現職。