テーマ:「AI 時代を多角的に理解する」 〜その光と影にどう対処すべきか?〜
今年のトップフォーラムは、昨年に引き続き東京大学ホームカミングデイ「銀杏祭」のイベントとして10月18日(土)、本郷キャンパスで埼玉銀杏会・千葉銀杏会・神奈川銀杏会との共催により開催いたしました。
共催
東京銀杏会・埼玉銀杏会・千葉銀杏会・神奈川銀杏会
日時・場所
2025年10月18日(土)東京大学本郷キャンパス法文1号館25番教室
コーディネーター
松尾豊氏(1997工、東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻/人工物工学研究センター教授・AI戦略会議座長)
パネリスト
- 関根正之氏(1990 理、ボストンコンサルティンググループ アソシエイト・ディレクター)
- 鶴岡慶雅氏(1997 工、東京大学大学院情報理工学系研究科教授)
- 横山広美氏(2004 東京理科大学大学院理工学研究科物理学専攻満期終了、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構学際情報学府教授)
司会
佐久間みかよ幹事(1981文)
基調講演では、コーディネーターの松尾氏から、AIが東大の理科三類の合格点を上回るなど、その能力はかつてないほど高度化している。仕事を自律的に計画・実行するAIエージェントが登場し、営業・経理・広告など幅広い業務で人間を補完し始めている。日本の高齢化と人手不足に鑑みると、基盤開発と社会実装を急ぐべきである。人間と同じ仕事を行える汎用人工知能が実現すると産業の仕組みそのものが変わり、多くの産業で人間と機械の仕事のリバランスが起こる可能性がある。産業のみならず、教育・政治等、社会のあらゆる領域に大きな影響を与え、AIの性能がそのまま企業・国家の競争力を左右する時代に突入していく、と問題提起がありました。

関根氏からは、経営コンサルタントの視点で、AIの研究開発に加え利活用においても日本は海外で劣後している。特に経営層のリテラシーとリーダーシップが欠けておりリスクを取らずデータを重視しない。これは文化に根差すので解決が難しい。AIエージェントなどビジネスモデル/組織を根本から変えかねない技術が台頭している。日本では公的支援は国際的にみても充実しているが、一方開発の主体となる民間企業を含めた投資規模などは米国などと比較して見劣りし、トップグループから離されている、と最近のデータをもとにした報告がありました。

鶴岡氏からは、技術開発の視点から、長期タスクの遂行能力などAIの能力向上が止まらない、指数関数的に技術が向上している。大規模言語モデルにおける強化学習の技術的背景もあって、応用面でも広がりを見せており、画像言語モデル、画像言語アクションモデルなど多様な発展が進んでいる。さらにAIエージェントの登場があり、AI駆動によるソフトウェア開発の生産性は飛躍的に向上している。また、注目技術としては世界モデルを使うオフライン強化学習でイメージトレーニングができるといったものがある。一方でAIの悪用、依存、雇用の消滅などの懸念がある、と技術の発展動向の報告と問題提起がありました。

横山氏からは、ご専門の科学技術と人文社会科学の関係を問う観点から、AIについての問題意識としては、コンピューターサイエンスを卒業した学生の新卒採用が悪化する一方技術を持つミドルキャリアのAIエンジニアが各社間で争奪戦があり、今後は、新卒教育のコストを誰が担うべきなのかが問題となる。AIに置き換えられない情報系人材の育成が必要だが文章を核とする人文社会科学は不透明な状況が続いている。AIが自ら研究をし、論文査読でもAIが評価をする時代では、研究、そして教育の在り方はどのように変化するのか。電力消費が進むAI導入と環境の持続可能性はどのように設計できるのか。AIを搭載した無人兵器はすでに一般化され、安全保障の観点からも使用は止められないとすれば、AIの暴走は抑えられないかもしれない。といった課題の情報共有がありました。

パネルディスカッションでは、補足説明や相互の意見交換があり、その後、会場から在学生を含め6名の質問への回答も行われました。
このトップフォーラムの詳細な内容は、来年秋発刊予定の会報銀杏 第27号に掲載する予定です。
(文責・小川富由 1977工、写真:渡口潔 1975工、奥宮京子 1981法、小川富由)
会場の模様
